4年目の再会

初めて会ったのに、まるで再会したみたいな気持ちでした。昨日、都立青山高校のグラウンドでお会いしました。

私が3年前に書いた『君たちは何をめざすのか』の本にも登場した、あの時の小学6年生、村瀬亘くんです。現在は、関ジュニアラグビースクール所属の中学3年生のプロップで、171センチ、90キロ。4月からは広島の尾道高校に進学することになったという連絡をいただきました。

4年前のワールドカップでは、楽しみにしていたニュージーランド対イタリア戦が台風19号で中止。その時の切ない思いを綴ったお母様のメールに対し、全国から多くのお申し出がありました。

「大阪に住む62歳の者です。開幕戦とアイルランド戦を見たので、私の『一生に一度』はもう十分です。冥途の土産はできました。私なんかが見るよりも、将来あるこの健気なラグビー少年に私のチケットをささげたいのです。私の準決勝のチケットをこの子に譲っていただけないでしょうか。私は近くのHUBかどこかで見ます」。

ほかにもニュージーランド在住のご家族が家族会議を開いて、娘さん用に予定していた一枚をねん出してくれるなど、さまざまなお申し出が続きました。

しかし、本人を含めご家族は「ほかにも楽しみにしていた人がたくさんいるのに、そんな貴重なチケットを使うことはできません」とずっと断り続けたのですが、元日本代表・大西将太郎さんがこの話を知り、スポンサー用のチケットを差し上げることで「みなさまからのあたたかい気持ちを受け、見れなかった人たちのお気持ちも背負って」と決意し、オールブラックス戦を観戦することになりました。

本人のいろいろな心の葛藤と、All for Oneの思いが込められた心温まるエピソード。私自身も「人は、これだけ人にやさしくなれるものだ」ということをあらためて学ばせていただきました。

「いつか徳増さんにお会いしたい」とずっと申し出があり、このたび、私に会うために昨日、お母さんの亜紀さんと一緒に岐阜の郡上から来てくれました。本人の希望で特別に都立青山高校の練習にも参加させていただきました。

夕方、亘くんからメッセージが届きました。

「今日はありがとうございました。今、新幹線に乗って帰っています。4年越しにようやく会えて直接お礼が言えて嬉しかったです。そして、青山高校で貴重な経験ができたのでそれを活かして尾道でも頑張ります！また、今度は僕が尾道高校でレギュラーで活躍している姿を見せられるよう頑張ります」

4年前、亘君のためにチケットの申し出をくださった全国のみなさま、本当にありがとうございました。ラグビーワールドカップのレガシーはこうやって脈々と続いています。そしてこれからも続きます。この場を借りて、あらためて御礼申し上げます。