• 徳増浩司のブログ (Blog by Koji Tokumasu)

<招致の記録⑦>日本代表欧州遠征とロビイング活動

2004年11月の日本代表欧州遠征は、これまでとは全く異なる使命を持っていた。ワールドカップ招致活動の中での遠征だ。もちろん、試合内容や結果も大切だが、各地で接する協会関係者やメディア、ファンに招致をアピールする絶好の機会でもある。選手団は招致ロゴのバッジを各地でのギフト交換用に持ち、箕内主将も試合終了後のアフターマッチファンクションでは、必ず「2011」をアピールすることになっていた。

日本代表の遠征に連動し、この期間に日本協会首脳陣もロビイング活動を行った。日比野会長代行、真下専務理事、堀越IRB理事らが中心になって、招致パンフレットを持参し、各地を訪問する。スコットランド、アイルランド、ウェールズ、イングランド、フランス、ルーマニアの各協会、在英国日本大使館、在アイルランド日本大使館、在フランス日本大使館、FIRA(欧州ラグビー機構)そして月末にロンドンで開催されるIRBアウォードセレモニー・・・実に21日間で13団体を訪問することになった。

真下専務理事と私は11月12日にロンドン到着。さっそく在英日本大使館を表敬訪問した。野上義二大使は、日比谷高校ラグビー部でフッカーとして全国高校大会に出場した経歴を持ち、ワールドカップ日本招致に対しての全面的支援を約束してくれた。また、大使が3年の1年生が故・町村外務大臣(左プロップ)で、両氏は日比谷高校ラグビー部での先輩・後輩の関係にある。

翌11月13日は、スコットランドに足を運び、日本代表がスコットランド代表とテストマッチを行う前に、試合会場の理事室にて2011年大会のプレゼンテーションを行った。
スコットランド協会からは20名の理事が出席。質疑応答の時間を多く取ることにより、活発な意見交換の場となった。スコットランド協会の理事らからは「ラグビーワールドカップを新しいマーケットに広げていく」という私たちのメッセージについては、好意的なレスポンスが見られた(ように見えた)

しかし、この試合、終わってみれば日本はスコットランドに8対100で大敗してしまった。私たちは茫然とした。試合前のプレゼンでは好意的な顔をみせていてくれたスコットランド協会の理事たちは、私たちに顔を合わせようともせず、そそくさに帰途についた。

このあと、ルーマニアに遠征して健闘はしたが10対25で惜敗した。1週間後にはウェールズ協会を訪問。スコットランドの時と同じく、試合前に日本招致のプレゼンを行ったときには、それなりの手ごたえを感じた。やがて日本対ウェールズの試合がミレニアムスタジアムで始まった。しかし、終わって見れば・・・今度は0対98の大敗である。

私たちは肩を落としてホテルに戻った。しばらくすると、ウェールズ協会のチェアマン、デビッド・ピカリングから私に電話があり、ホテルの近くで一杯飲まないかというになった。ピカリング氏は、私がかつてウェールズに滞在した時代の友人でもあった。
お互いビールが進み、午後9時くらいを回った頃だろうか、ほろ酔い加減になったデビッドが突然私にこう言い始めた。
「ワールドカップ招致もいいけど、やっぱり、どう考えても100点ゲームで負けるような国にワールドカップがいくわけがないだろう。どう思ってるんだ?」

これが伝統国の理事の本心なのか。私には返す言葉がなかった。悔しさとともに、しかしこれは決して負けられないと思った。 (写真は現地での記者会見の様子)