• 徳増浩司のブログ (Blog by Koji Tokumasu)

今のこの時期にふさわしい豊かな体験とは?

最近読んだ『DIE WITH ZERO(ゼロで死ね)』(ダイヤモンド社)という本に出てくる、こんなエピソードに興味を持ちました。著者ビル・パーキンス氏は一言でいえばビジネスの成功者で、アメリカ人です。

「2人の娘が小さかったころ、私はよく一緒に『くまのプーさん』を観た。この映画が好きで、娘たちと一緒に何度も繰り返して観ていた。ところがある日、10歳の次女にこの映画を観ようとさそったところ、断られてしまった。どうやらもうこうした子ども向けの映画は見たくないということらしい」。「あらかじめこうなることを知っていたのなら、私はもっと娘たちと一緒にこの映画を観ようとしただろう。残念なことに私たちは何かができなくなる日付を事前に知ることはできない。大切なものは、知らないうちにゆっくりと遠ざかっていく」。

著者は「人生で一番大切なことは豊かな体験」といい「しかし、それができる時は限られている。だから惜しまずに、それができる時に体験せよ」と訴える。

本書の中に、もうひとつ面白い例がある。「まだよちよち歩きの幼いころにイタリアに旅行に連れていってもらっても、おそらくジェラードが好きになることくらいしか得られるものはない。しかし、90歳の時にローマのスペイン階段を上がろうとしても、どれくらい楽しめるかは疑問だ」。人生の充実度を高めるのは、その時々にふさわしい経験だと著者はいう。

私はこのメッセージをそのままユース・スポーツに置き換えたいと思いました。たとえば小学生のラグビースクール。週末に1時間半の練習がある。その中で指導者である私たちは、子どもたちにどれだけ「豊かな体験」を与えることができるのか。そして、その「豊かな体験」とは一体何なのか。

神様でもない限り、これが絶対という答えはないはずだ。しかし、私たちはラグビーのスキルやフィジカルの指導や、ゲームをアレンジするときに、常に「今のこの時期の子どもたちにふさわしい豊かな体験とは何か」を意識する必要がある。それは小学1年生と6年生では明らかに違うはずだ。これをヒントにして、ふたたび『ダブル・ゴール・コーチ』~サブタイトルにもある“勝利と豊かな人生を手に入れる指導法”の続きを読み進んでみたいと思います。(この本、400ページ近くもあり、なかなか読み進めないのです)

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