• 徳増浩司のブログ (Blog by Koji Tokumasu)

<ラグビースクールでのコーチング>⑦マネジメントが生命線

(まえがき)ラグビースクールとかけて何と解く?といわれて、最近の実感は「1にマネジメント、2にマネジメント、3、4がなくて5にコーチング」といったところでしょうか?本来は「コーチング」(オン・ザ・ピッチ)がトップに出てくるべきでしょうが、実際にはマネジメント(オフ・ザ・ピッチ)に大きな労力を取られてしまいます。しかもこの2年間は、新型コロナウイルスの感染防止対策で大わらわ。今回はそんな観点から書いてみました。

(本文)

ラグビースクールを始めてみて痛感したのは、結局はクラブのマネジメントが生命線だということです。

さっと思いつくまま書いてみても、①グラウンドの確保、②コーチの確保、③メンバーへの連絡、④備品や用具の準備、⑤体験入会希望者への案内、⑥会費の徴収など枚挙にいとまがありません。グラウンドの確保は、いまだ全国のラグビースクールの最大課題のひとつで、定期的に使えるグラウンドを持ったスクールは本当に恵まれているというべきでしょう。また、学校の部活と違って、一年中、体験希望者や入会・退会者がいる。つまり、メンバーが一定数、常に変わり続けているのも、マネジメントを大変にしています。

これらに加え、この2年間は、新型コロナウイルス対策で問診票の提出や体温チェックなどが加わりました。実際にグラウンドで練習を始めるまでの「舞台裏」で、マネジメントに大きな労力を取られています。そうなると、優れたマネジメントがあってはじめて、優れたコーチングが可能になるということができると思います。

渋谷インターナショナルラグビークラブを創設して4年半が経ちましたが、私がその間に費やした時間もほとんどマネジメントで、おそらく全体の80%くらいでしょうか?今日は午前中に久しぶりに中学生のコーチングを(コーチが不足していたので)やりましたが、いやーグラウンドで汗を流すのは楽しかったです。これまでは、自分が自らコーチングをする余裕もなかったですし、コーチ育成のためにも今さら自分がやるべきじゃないというのもありました。

このたび、あらためて2002年に発行された『ミニ・ラグビー指導の手引き』(日本協会発行)に目を通してみました。その中にも「少年ラグビークラブのおけるマネジメントの工夫」という項目があります。執筆したのは、日本協会普及育成委員会コーチ部門のアドバイザー山道信之氏(ふくじゅ草スポーツ少年団ラグビースクール校長)。

『ミニ・ラグビー指導の手引き』はすでにお読みになっている方がほとんどだと思いますが、ちょっと気になった部分を書き出してみたいと思います。山道氏は、組織のあるべき姿を次のように表現しています。「共通目的を遂行するために作られた組織が、社会環境の変化に対応し、その制約条件の中、目的をいかに合理的に達成するか、参加者の意欲を満足させ、いかに拡大するか、マネジメントの能力いかんにかかわっています」。

2002年に書かれた同書ですが「社会環境の変化に対応し、その制約条件の中・・・」というくだりが、まるで現在のコロナ禍を暗示しているようで、もはや、私が何も書き足す必要もないでしょう。

そんな中で、私が「あれ?」と思った項目が、マネジメントで大切なことに「適切な熱意」があるという指摘でした。「あまりにも熱心であったり、純粋すぎる場合は、進路を誤ることも認識しておいてください」とあります。

すごく気になる表現だったので、さっそく山道さんに電話で質問してみました。山道さんとは私が茗渓学園の中学部を教えていた時に交流をさせていただいていたので、ずいぶん前にさかのぼりますが、以下は電話での会話です。

「山道さん、お久しぶりです。あそこに書かれていた「適切な熱意」という表現ですが、私たちは、熱心すぎてもいけないのでしょうか?」

「そうなんですね。特にこれは勝負に対しての熱心さについてですが、指導者の中にはだんだん熱くなりすぎてしまい、勝負に過度にこだわる人たちが出てきがちなのです」

「なので私はラグビースクールでは、“2勝3敗”くらいのゲーム結果が理想的だと思っています。これが“3勝2敗”あたりになってくると、だんだん次は“4勝1敗”を、そして最後には”5勝全勝“をコーチがめざすようになってきてしまうのです」

元々、山道さんの哲学的な思考には注目していましたが、この”2勝3敗”セオリーはユニークで感銘を受けました。つまりちょっと負けている感じ、もう少しがんばろうかくらいの感じが、小学生の指導にはちょうどいいという考え方です。

「小学生の全国大会も盛んになっていく中で、一部の指導者が勝負に熱くなりすぎて、ラグビースクールの指導者が分裂してしまったり、試合に出る機会が少なくなってやめていく子もいます」という山道さん。「適切な熱意」という表現の真意がやっとわかりました。

こうしてみると、山道さんが書いた「共通目的を遂行するために作られた組織が、目的をいかに合理的に達成するかは、マネジメントの能力いかんにかかわっています」という表現にますます重みを感じるのでした。ラグビースクールの「共通目的」「共通目標」は何か、その大切な部分を見失わないことが大切ですね。

山道さんの言葉には示唆に富んだものがあり「子どもたちはクラブの多くのメンバーの一員であると同時に、各家庭にあって宝物であること十分認識してください」。これなどは、あらためて肝に銘じたいと思ったしだいです。

さて、これまで7回にわたって連載を書いてきましたが、来週あたりからは当初計画した、各エイジ別のカリキュラムや練習内容のありかたなどについて細かく研究してみたいと思っています。今回もあまりまとまらない内容になってしまいましたが、みなさま、ぜひよい1週間をお過ごしください。(写真提供=渋谷インターナショナルラグビークラブ)