• 徳増浩司のブログ (Blog by Koji Tokumasu)

<ラグビースクールでのコーチング>⑤クラブカルチャーに見られる個性

全国のラグビースクールのホームページを見ると、一番多く見られるのが「子どもたちにラグビーの楽しさを伝えたい」というものです。「Rugby Kids」のサイトには現在までに94ものラグビースクールが紹介されています。https://rkids.jp/

また、日本協会の機関誌でも「ラグビースクールに行こう!」という連載が藤本幸俊さんの執筆で続けられ、最新号では、熊本県の人吉ラグビースクールが紹介されています。https://www.rugby-japan.jp/news/2022/01/31/51169

しかし、一見同じように見える各ラグビースクールにも、独特のカラーがあります。私はこれを「クラブカルチャー」(クラブの文化)と呼びたいと思います。あるクラブではダメなことも、他のクラブではOKだったりもします。

ラグビースクールのおもしろさは、クラブの個性にあるのではないでしょうか。一般的に高校のラグビー部では、極端に違うカルチャーを持ったチームはそうは見当たりませんが、スクールでは千差万別です。

私が四年前に創設した渋谷インターナショナルラグビークラブも“一風変わったスクール“と言われています。今回は、一般のスクールとの対比で書いてみたいと思います。

まず、チーム名に「スクール」ではなく「クラブ」を使ったことに対してです。たとえば、前述のRugby Kidsでは村上晃一さんが江東ラグビークラブの安田和彦さんに「なぜ江東ラグビースクールではなく、江東ラグビークラブなのですか」という質問をし、安田さんが「ラグビーを教え込むという感じではなく、保護者のみなさんも一緒になって、みんなで作っていこうという概念です」と答えています。

渋谷インターナショナルラグビークラブの場合には、ウェールズのクラブのように、幼児から成人までが属することのできる地域クラブになりたいという願いでクラブとしました。余談ですが、海外のチームと交流するときに「ラグビースクール」をそのまま英語にすると「それは学校なの?」と聞かれることがあります。さらに英語でRugby Schoolとすると、あのラグビー発祥の地、ラグビー校のことを指します。しかし、全国に400ある「ラグビースクール」は我が国独自の呼称であったとしても、いまや日本のラグビーを支えてきた歴史的存在であることは誰しもが認めるところです。(我が国の場合、成人によるクラブチームとは違うという意味でラグビースクールという表現が用いられてきましたが、将来、海外に逆輸入される時がくるかもしれません)

さて、渋谷インターナショナルラグビークラブの場合には、コーチ陣がほとんど外国籍ということもあり、いわゆる「とてもゆるい」クラブです。年間の練習日が30日程度で、それも1回に1時間半と決められています。2021年度に関しては、新型コロナウイルスによる自粛期間があったため、4月からの10か月間でわずか18回の練習しかできませんでした。

エイジグループは次の7つに分かれており、それぞれヘッドコーチがついています。ユニークなのはヘッドコーチの国籍です。

<幼児> オーストラリア・ウェールズ

<小学1年> オーストラリア・日本

<小学2年およびタグクラス> ニュージーランド

<中学年(3-4年生)> 南アフリカ(サポートにアメリカ)

<高学年(5-6年生)> イングランド (サポートにアイルランド・スコットランド)

<中学部> ニュージーランド

<高校部> イングランド

当初私は、国の考え方の違いが出てきていろいろと調整が大変なのではと思ったのですが、ここが一番不思議なところです。イギリスで生まれて世界に広がったラグビーというスポーツは、国は変わっても、特に英語圏の場合、コンセプト、特に子どもたちへのアプローチは大きく変わらなかったということなのです。

一言でいえば「子どものウチはラグビーを楽しむこと。しかも、ラグビーだけではなく、今のうちにいろいろなスポーツや活動を体験させたい」。先般も、あるチームから土曜日に交流ゲームのお誘いを受けたため、私もありがたくお受けしたくコーチ陣に相談したところ「ラグビーは日曜だけで十分。土曜は子どもたちもほかにやりたいことがいろいろあるから」「週末の2日ともラグビーにつぶされてしまうのはつらい」と一蹴されてしまいました。

しかし、しかし、だからこそ、年間30回の練習の中身もっともっとブラッシュアップしてクオリティーを上げていきたいというのが私が本欄を始めたきっかけです。もっとやることを明確にしよう、しかも年齢別に。

そこで、明日1月13日(日)は部内でオンラインでコーチングセミナーを開催します。全コーチ参加の元、各エイジグループのヘッドコーチが自分のグループで行っている練習ドリルを動画で紹介し、プレゼンをする。それについてみんなでディスカッションをする。それを7グループ分やってみます。

また、セミナーのあとは、私は近郊の世田谷区ラグビースクールに足を運び、練習を見学させていただこうと考えています。これらから得た「学び」については、また来週以降本欄でご報告させていただきます。(写真は12月上旬のクラスの様子。中央でサンタ帽をかぶって力説しているのが、南アフリカ出身のノーマンさんです)