• 徳増浩司のブログ (Blog by Koji Tokumasu)

<ラグビースクールでのコーチング>③実際のゲームで起きていること

この連載は「週1回の練習では何をすべきか」というテーマで始めました。先週は、スキルをわかりやすく分析するために「スペーススキル」と「コンタクトスキル」の2つに分けて考える案について触れました。

今回はひとつの教材として小学高学年チームのゲームを見てみたいと思います。1月16日に行われた渋谷インターナショナルラグビークラブと狛江ラグビースクールとの交流ゲームです。

https://www.facebook.com/shibuyarugby/videos/626619165057720/

決して模範的なゲームというわけではなく、ごく普通のラグビースクールのゲームのひとつとしてご覧ください。(今回は渋谷のfacebookからのシェアなので、こちらのアタックの場面がメインであることをご容赦いただくとして)アタックの要素は主に次のように分類できます。

  1. ボールを持って走る
  2. パスする
  3. キャッチする
  4. 相手につかまると同時にパスする(オフロードパス)
  5. または、相手につかまってラックにする
  6. 地上のボールを拾う⇒①へ

いわゆる「リサイクル」ですが、渋谷の子どもたちのプレーには、バックスラインへの流れるパスはほとんどなく、ボールを持った子が好きなような方向に走り、つかまったらつなぐ・・ということの連続です。いわば原始的なラグビーというのでしょうか?

これも道理で、ふだんからシステマチックな練習をしていないからです。通常でも年30回しか練習していませんし、コロナ禍で、この半年で10数回やれただけでした。週1回の練習にくる子もいれば来ない子もいる、それ以外の時間はまったくラグビーをやっていないとなると、バックスのライン練習などやるよりも、いわば「全員がバックスでありフォワード」であるようなアンストラクチャーな原始状態が普通になってきます。

さらに、ボールを持ってゲインしている時を観察してみると

  1. ボールを持ったプレーヤーがまっすぐ相手に当たるのではなく、ギャップを突いたり、少しアングルチェンジをしながら走る。
  2. 安易にラックを作らず、少しズレながらできるだけパスをつなぐ努力をする。

上記の①と②を繰り返していく攻撃になります。

しかし、これも自分たちと同じレベル、同じポリシーのチームだからできることでもあります。以前にもご紹介しましたが、対戦相手の狛江ラグビースクールも代表の水谷禎憲さんは「ウチは基本的には練習はしません。ずっとゲームだけやっていますよ」というゆるやかなポリシー。ところがこれがひとつ上のレベルのチームと対戦すると、ラックにしたボールをことごとくカウンターラックでターンオーバーされてボールを奪われて、結果は大敗。

ゲームに負けるとコーチも子どもたちも悔しいのでつい「今度からもっとラックの練習をしよう」となり、週に1回の貴重な時間がどんどんブレイクダウンの時間に割かれていきがちです。

私の疑問は果たしてそれでいいのだろうか?ということです。わずか週に1回しか練習できないなら「楽しく創造的な練習」に時間を割くべきではないか。これは、決してブレイクダウンの練習をすべきではないというのではなく、あくまでバランスの問題ですが。

また、逆の発想で、週に1回の練習こそは、日常生活では体験することのないブレイクダウンに特化して、あとのスキルはゲームを通して覚えるという考え方もあると思います。安全管理という点でも、ブレイクダウンやコンタクトの練習はやらざるを得ません。しかし、ひとつ言えるのは、小学生の間はゆるやかにプレーすることも大切で、そのためにはあまり自分たちとレベルの違うチームとは対戦しないという方針もありではないかと思います。

今回は問題提起ということで、この続きは次回に展開したいと思います。