(本原稿は、世田谷区立千歳中学校の3年生に対して行った講演に加筆して作成しました)
みなさんこんにちは。徳増浩司です。一昨年に開催された「ラグビーワールドカップ2019」では組織委員会に務めていました。最近は、渋谷インターナショナルラグビークラブや、都立青山高校でラグビーを教えています。私は、ラグビーワールドカップを通じていろいろな人達と友達になることができました。この写真のサンドウィッチマンのお二人もそうです。どうしてサンドウィッチマンと友達になれたかはあとでお話しますね。
私はみなさんともいろいろご縁があります。近くの世田谷区の烏山中学の出身で、中一の時には東京オリンピックがあって、学校の横の甲州街道がマラソンコースになっていたので、全校生徒で応援しました。金メダルを取ったエチオピアのアベベ選手が裸足で走っていたのを覚えています。ラグビー部の長嶋章先生とは、中学生のラグビー大会を通じてこれまでも交流があります。
今日は『夢に向かって~グローバルコミュニケーション』という題でお話させていただきます。
この図を見てください。日本の人口は1億2千万人ですが、世界の人口は78億7千万人。日本の約65倍あります。今、この体育館には213人の中3がいますから、この計算でいくと世界の中に、日本人は3~4人くらしかいなことになってしまいます。世界が200人、日本人が3人と考えると、残りの197人の世界の人たちとお話したくても、日本語だけでは通じないということになります。
私はこれまで世界の36か国を訪問してきたのですが、今朝、航空会社のマイレージ記録を見てみたら、なんと地球を24周まわって、月まで1.2往復しているということがわかりました。それだけ何回も飛行機に乗っているということですが、世界を回るといろいろなことがありますね。
アジアラグビーの会長になって最初に行ったのは、インドのチェンナイというところだったんです。2月の寒い時期に行ったのですが、チェンナイは赤道直下にあるので、2月でも気温は33℃もあるんですね。ここで大会が行われたんですが、私はアジアラグビーの会長なので大会中ずっとグラウンドにいなければならないのですが、さすがに33℃は暑いので、頭がクラクラしていました。
ホテルに帰ってみると、部屋の気温が22度に冷えているんですよね、さすがにちょっと寒かったので、部屋のエアコンをコントローラーを調節しようとしたのですが、まったく作動しない。そこで、フロントに電話をして「エアコンのコントローラーが作動しなんですが」と言ったところ「当ホテルでは、一年中この温度に設定されているので、変えられません」という返事。「風邪ひきそうなのでなんとかなりませんか」って言ったら「ちょっとお待ちください」というので、部屋で待っていました。エアコンを調整してくれるのかと思ったら、ホテルのボーイさんが持ってきたのが、なんと電気ヒーターだったんです。エアコンで思い切り冷やした室内を電気ヒーターで温めるという、電力の無駄というか、あまり体に良くないことをやっているなと思いながら数日間をすごしました。おかげで風邪はなんとか治りましたが。
ベトナムの小さな空港でトランジットした時のこと。航空会社の人が「出発まであと1時間ありますから」と言ったので、待合室の隣のマッサージ室に行ってのんびり全身マッサージをしてもらうことにしました。」ところが、ちょうど右半分が終わったあたりで、突然「出発時間になりました。すぐに搭乗口にお越しください」とのアナウンス。あわててマッサージを中止して、部屋を飛び出しました。体の右半分だけマッサージが終わったところで搭乗、不完全燃焼というのか、すごく中途半端な状態でフライトしていた経験もありました。
パキスタンで行われたアジアラグビーの執行会議では、その前の週にパキスタンでテロ事件が発生して外務省のホームページでも渡航注意エリアに指定されていました。私はあえて危険なところで会議をやりたくないと思ったのですが、パキスタンの理事が「それでは私たちがテロリストに屈することになる。会議をやることこそが、テロリストに対しての私たちの平和へのアピールだ」と言うではないですか。私はアジアラグビーの会長という立場なので、その意見に反対するわけにもいかず、決死の覚悟でイスラマバードに向かいました。空港に迎えに来た送迎バスは、何とバスの前と後ろをポリスの護衛の車が並走して、物々しい姿でホテルに向かいました。私はこれではかえって目立ってしまって危ないのではないかと思ってしまったほどでした。2日の会議を無事に終えて、羽田空港に戻ってきたときにはほっとしたというか、遠くに見える富士山が夕焼けに美しく映える姿を見て、自分は本当に安全な国にいるものだと実感しました。
海外に行くといろいろ予測できないことが起こるものです。私のモットーは「ダメもと」。「ダメが元で何でもやってみよう」ということで、ここまでやってきました。グローバルな体験をするためには、意外と大切なことかもしれません。
(つづく)