「また日本でラグビーワールドカップが見たい」という声をよく聞くが、現実的にはいつ頃来ることになるのだろう?今回の日本開催も、2003年に招致を始めてから開催まで16年かかっている。こう考えると、16年後、20年後の開催を狙うとしても、すぐに招致準備にかからなければならないと私は考えている。
今後の開催国は次のように想定される。
2023年 フランス(決定)
2027年 南アフリカ?
2031年 ヨーロッパ?(アイルランドあたりか)
2035年 オーストラリアあたりか?
2039年 ヨーロッパ?
2043年 ?
2023年のフランス大会の次は、どうしても南アフリカを持ってこざるを得ないだろう。1995年にマンデラ大統領の元に大会を成功させた南アフリカだったが、2011,15,19,23年とこれまで4大会連続で招致していてすべて敗れている。日本大会での優勝をバネに「今度こそは」と2027年大会の開催に相当の意気込みでかけてくるだろう。
開催国決定には、これまで暗黙の了解があった。テレビ放映権収入や商業権収入の関係で、2回に1回はヨーロッパにホスト国を戻すということだ。実際、これまでもそのとおりになっている。となると、2031年は、前回招致で敗れたアイルランドあたりがまた手を上げてくる可能性がある。(この原則は絶対とはいえないが、ラグビーがもっと収益性のあるマーケットを拡大しない限り、このパターンからは脱却できないだろう)
問題はその次だ。2035年大会、日本開催からすでに16年後経っている。ここに日本が手を挙げようとした時に、たとえば、オーストラリアが立候補してくるとしよう。彼らは「私たちは2003年以来、32年間もやっていない」と言い張るだろう。その時「日本は2019年にやったばかりではないか」と言われてどう対抗できるか。SANZARなどを巻き込まれると、オーストラリアが束ねることのできる投票ブロック数には、日本はかなわない。
もしここで取れないと、2039年は順番的にヨーロッパ開催となる。すると、次に狙えるのは2043年。24年後だ。しかし今度はここに、たとえばアメリカが手を上げてきて「新天地にラグビーを!」というアピールを始められたらどうなるか。そしてアメリカが、思ってもみない秘策を出して来たら・・・。
「招致を勝ち取る」ということは、仮にこちらが万全の準備をしたとしても、その時の“対抗馬”との関係で、取れるものが取れないということがある。日本大会は確かに大成功した。しかしほかの協会も、みんな自分の国で開催したいという夢をずっと持っていることを忘れてなならない。
2023年大会も南アフリカが本命視されていたが、フランスが逆転勝利した。フランスは招致プレゼンで「私たちはプール戦で敗退したチームも含め全20チームをすべて決勝まで滞在させます。参加チームには、いつでも使えるTGV(新幹線)を24時間特別にご用意します」とアピールしたことなどで、開催権を獲得した。
上記の理由から、私は早いうちに「ラグビーワールドカップ招致準備室」を作るように提案したい。前回の招致のノウハウを蓄積し、招致の“下準備”を始めておくということだ。“下準備”とは、投票権を持った各国協会と良好な関係を普段から築き上げておくということにほかならない。その活動は、招致のみならず、協会としての国際関係の改善にもつながる。ラグビーワールドカップの招致を実際に勝ち取るにはそれなりの覚悟と準備がいる。